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2006年12月

有機農業推進法が成立
有機農業の推進に関する法律(有機農業推進法)が超党派の議員連盟による議員立法として提出され、12月8日、衆議院本会議で可決、成立し、15日に公布、施行となった。成立が期待されてきた法律だが、基本政策、運用には、用心が必要だ。
参議院法制局の説明によると、この法律は有機JAS農産物の厳格な規定によらないで取り組み可能な範囲まで有機の裾野をひろげる(規制緩和)のが目的なのだという。

以下の図に有機JAS農産物で規制されていて、この法律では規制されなかった部分を示す。


※クリックで拡大

・たい肥による土づくり(土づくりの条件)の規制が外されることについて以下のことが懸念される。

1)遺伝子組換え作物由来の飼料を与えた家畜の糞による堆肥が容認され使われ続けることになる

2)各地の堆肥センターが1)の家畜の糞や下水汚泥、食品残渣などを受け入れて堆肥に変え、これをエコ・ファーマー(農薬や化学肥料の使用を減らした農業を行うことで認定される)などに供給することになれば、土壌、環境汚染、農作物汚染を広げる 

・禁止農薬の飛散や収穫後の薬剤による汚染を許容  農薬散布を地域全体で止めて有機に転換するという方向にはいかず、農薬使用の現状追認のままで、栽培中に農薬や化学肥料を減らした程度の特別栽培作物が準有機扱いで支援対象とされる。

安全で環境汚染をしない本物の有機を推進するために、遺伝子組み換えの混入する輸入配合飼料によらない飼料供給の道を行政が農業者とともに真摯に取り組む機会を奪い、準有機農産物の名を借りて、質や来歴を吟味しないですむ、安易な、まがい農業を広げることになりはしないか。消費者はまがい有機農産物を買わされ、そうなれば本物の有機生産者を圧迫し、かえって有機農業の真の発展をじゃますることになってしまう。

そうさせないように、運用規定に歯止めを明記させる取り組みが早急に必要と思う。

2006年12月29日更新
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農家の自家採種が犯罪になる日
農水省は12月19日、「植物新品種の保護の強化及び活用の促進に関する検討会報告」をまとめた。19年度予算措置が取られ、法改正に向けて始動することになった。これはなにをしたいがための法改正かというと、種子の開発企業などの権利強化を格段にはかり、そのために主には農家の自家増殖に網をかけるのが目的だ。

私は最終検討会と11月15日に開催された「植物新品種の育成者権行使に関する国際会議」の発表を聞き、グローバル産業となった種苗企業の知的財産権が農家の耕作権より上回る事態が招来されようとしていると感じた。

国際会議において、農水省種苗課長は以下の趣旨を発表した。育成者の権利強化の諸整備、農家の自家増殖に制限をかけることを検討し、法的な制度設計をスタートさせること、農家の自家増殖については、これまで農家の購入種子の増殖については容認され、例外として増殖禁止品種(現在81種)をリストアップしてきたが、将来的には増殖は原則禁止とし、増殖を認める例外品種をリストアップする形に180度転換するという。

これは植物新品種保護条約の91年改正と、国際種子連盟(世界の種苗産業を代表)やSTAFF(社団法人農林水産先端技術産業振興センター 育成者権の保護促進を目的に6団体などが協同)などから強い要望が出されていることが背景にある。

種苗企業らは育成者権、特許権、商標権で知的財産権を多重にガードするようになった。しかし、特許権が生物体に付することができるものかどうかの根本的議論や検討がすっぽり抜け落ちている。検討会案に対する意見募集に応じた弁護士の意見にも実際の育成者権侵害訴訟を想定した場合、植物体現物で特許権の新奇性、再現性などの要件をどう判断するのか困難との指摘もあった。まったくそのとおりだ。

一方、農水省は品種保護Gメン制度をすでに導入し今後増員をはかり、農地への立ち入り調査権についても検討するという。米国ではモンサント社が雇った探偵が農家の畑に勝手に立ち入り、作物を採取して賠償請求をしているが、日本は国がGメンを使って種苗企業のために、それをやるというのだ。

新品種に限ってだろうと思うのは甘い。バイオ企業はジーンバンクに入り込んで、在来種子にも遺伝子解析して特許を片っ端から取っている。モンサント社はすでに11000種以上もの特許を取っているという(「食の未来」から)。

種苗企業といってもいまでは巨大な多国籍バイオ産業である。ちなみにモンサント社は世界一の種苗企業である。

農水省が農家よりもバイオ産業のほうを向いての政策に大きく舵を切り替えている。その方向を許してよいものだろうか。

種子は名も無き無数の農家の手によって今日ここに存在するもの。そして未来に引き継ぐべき公共財ではないか。企業の際限なき欲望の餌食にしてはならない。(「いのちの講座」43号巻頭言から)
2006年12月24日更新
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