マーク・パーディ氏東京講演会(3月31日)報告
マーク・パーディ氏(英国)は3月19日に来日して全国縦断講演の最後に、このウェブサイトでもお知らせしたとおり東京農大講堂にて講演を行いました。
氏は レイチェル・カーソンの『沈黙の春』を読んで有機農業を目指し、19歳のとき(1972)、借地で有機農業を開始。その後、家族的有機農業法人へと発展し、現在60頭の純系ジャージー乳牛を飼っています。
家畜の飼料は、事実上自給で賄い、濃厚ペレット飼料は一切購入したことはありません。
1984年には、英国農業省によるウシバエ駆除のための牛への有機リン系殺虫剤強制処置を拒否して勝訴。
英国政府が強制した浸透性の有機リン系殺虫剤は、他国の4倍量が牛の背中に散布されました。
それには脳内の金属とその価電子の微妙なバランスを崩す力があり、1986年にBSEの発生が始まったとき、そのツケが出たものであって、いわば当然の結果と氏には見えました。
完全有機の農場で育成された牛にBSEが一件も発生していないという調査発表を見て強い印象を受けたといいます。有機基準では、20%まで一般の飼料が許されており、肉骨粉もその範囲で許されていたにもかかわらず、です。
氏はBSEとその人間版であるvCJDについて、大方が原因として合意していることに重大な疑問を抱きました。
すべての海綿状脳症は、神経系統にあるプリオン蛋白質の奇形化によるものですが、そもそも自然界でプリオンがどのように異常化したのかは誰にも分かっていません。
氏は、牛の背骨にある、プリオン蛋白からわずか数ミリしかない背中に沿ってかけられる浸透性のウシバエ殺虫剤フォスメットを疑い、実験を依頼した結果、プリオン蛋白の細胞代謝異常を起こすことが分かりました。
しかし奇形化は起こりませんでした。有機リン殺虫剤だけが原因ではなく有機リン剤と働く何か(Xファクター)が欠落部分を埋めることで原因を作っているに違いないと考え、昔から多く海綿状脳症が発生している地域に共通する特有の環境要因を調べ始めました。
海綿状脳症が人と動物に高い割合で発生しているコロラド、アイスランド、スロバキア、カラブリア、サルディニアなどを調べて回りました。
分析の結果、これらの地域の食物連鎖に異常に高いレベルのマンガンと銅、セレン、亜鉛の欠乏が見られました。
またケンブリッジ大学でプリオン蛋白を研究しているディビッド・ブラウン博士は、銅が正常なプリオン蛋白に結びつき、銅蛋白が抗酸化力を持つことを明らかにしました。またパーディ氏の現地調査を基にブラウン博士は、プリオン蛋白を生成する細胞にマンガンを注入する細胞培養実験を行い、みごとにプリオン蛋白の異形化を起こしたのです。
紫外線は、TSEを科学するのに必要なもう一つのリンクでした。
銅が結びついた正常なプリオン蛋白は、網膜、松果体、視床下部、脳下垂体、脳幹など脳の周辺で紫外線によって発生した電磁波を通す神経系統に分布しています。
プリオン蛋白は、脾臓、リンパ系、グリア細胞、ニューロンの成長と修復時の増殖に神経成長因子が仲介する幹細胞などその生理機能に電磁波エネルギーを利用する部位にも発現しています。
経絡に沿って電気恒常性を維持する調整機能を果たすのが正常な銅プリオンで、中国医学の電磁気経絡の存在に科学的根拠を与えうるのが銅プリオン蛋白の電気伝導性です。
銅は電流を通す導体として利用され、マンガンは電池や電球のフィラメントとして電気エネルギーを蓄えるのに利用されています。
正常な銅プリオンは、睡眠、性、行動などの生命サイクルのバランスを維持する働きを助けるために神経系を通して光エネルギーを通過させ脳を刺激します。
それに対し、マンガン・プリオンは、紫外線エネルギーを遮断し蓄積して「発火点」まで到達します。このレベルで、神経病原性フリーラジカルがクラスター爆弾のように爆発し、神経系に沿って連鎖的に伝わっていくのです。
こうなると、TSE(伝達性海綿状脳症)に罹った哺乳動物は、正常な銅プリオンが不足しているため、網膜で受けた紫外線の酸化力を排除できません。
そして、紫外線のエネルギーが溜まり、行き場を失って蓄積されている無害なマンガン2+(抗酸化物質)を致死的マンガン3+/4+(酸化物質)に変換してしまいます。
網膜にマンガン・プリオン蛋白が蓄積されると、安全なものが致死性のものに変わってしまいます。
過去20年にわたって、ヨーロッパでは高濃度酸化マンガン添加剤が、牛や人、動物園の動物、ペットの食物連鎖中に自由摂取ミネラル(飼料)、錠剤、肥料、殺菌スプレー、塗料、ガソリン添加剤などの様々な形で増えてきています。
さらに、この金属を生体濃縮する大豆の飼料利用がトレンディであるとして増えています。
また、マンガンが幼児や子牛の代用乳に自然な母乳の1000倍近いレベルで添加されています。
未成熟な哺乳動物の食餌中に過剰なマンガンがあることは、血液の脳障壁が十分に形成されておらず、マンガンなど金属が脳に過剰に摂り込まれることになってしまいます。
パーディ氏は最善のBSE発生防止策は有機畜産であると、解決の方向を結論付けています。
(集会資料から要約 安田節子)
(2002/4/23)