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マウスの長期実験でGMトウモロコシと発がん性に関連、 仏政府が調査要請


出典:9月21日 AFPBB News

フランス政府は9月19日、遺伝子組み換え(GM)トウモロコシと発がんの関連性がマウス実験で示されたとして、フランス食品環境労働衛生安全庁(ANSES)に調査を要請した。調査結果によっては該当するトウモロコシの欧州への輸入の緊急停止をも含め、人間および動物の健康を守るために必要なあらゆる措置をとるよう、仏政府からEU当局に要請すると発表した。

仏カーン大学の研究チームが行ったマウス実験はモンサント社の除草剤「ラウンドアップ」耐性をもつよう遺伝子操作されたGMトウモロコシ「NK603」。これまで90日間のマウス実験に基づいて「従来のトウモロコシと同様に安全」との判断を下されていた。今回の実験では「NK603」を2年間(通常のマウスの寿命に相当)という長期にわたって行った。

論文は 仏専門誌「Food and Chemical Toxicology(食品と化学毒性)」で発表された。マウス200匹を用いて行われた実験で、トウモロコシ「NK603」を食べる、もしくは除草剤「ラウンドアップ」と接触したマウスのグループに腫瘍を確認した。

研究を率いた同大のジル・エリック・セラリーニ氏は「GM作物と除草剤による健康への長期的な影響が初めて、しかも政府や業界の調査よりも徹底的に調査された。この結果は警戒すべきものだ」と述べている。

注:「NK603」は現在、欧州への輸出は可能となっているが、域内での栽培は禁止されている

実験内容についての記事 
早期の死亡とがんにGMコーンとラウンドアップが関連する

CRIIGEN Study Links GM Maize and Roundup to Premature Death and Cancer (リンク先に写真あり 翻訳:山田勝己)

フランスの専門誌“Food and Chemical Toxicology”に発表された論文で、「遺伝子操作に関する独立情報研究機関」(CRIIGEN) のギレス・エリク・セラリーニ教授が率いる研究チームは、米国内の食品や飲料水の許容値内のNK603のGMコーンやラウンドアップ水溶液を与えられたラットが通常の餌を与えられたラットよりも早期にガンを発生し死亡していることを明らかにした。乳癌と深刻な肝臓、腎臓の障害を受けていた。

モンサントのラウンドアップ除草剤とラウンドアップ耐性GMコーンNK603に対する世界初の長期給餌試験で、CRIIGENの研究者らは極微量でも雄では通常23ヶ月が4ヶ月、メスでは14ヶ月が7ヶ月で乳癌と深刻な肝臓と腎臓障害を引き起こすことを発見した。

実験は、1グループ雄10匹雌10匹からなる10グル−プについて寿命の尽きるまでを見た。3つのグループには暴露レベルによって異なる3段階の濃度で飲み水に除草剤ラウンドアップを入れて与えた。3つのグループにはラウンドアップ耐性コーンをそれぞれ11%、22%、33%混ぜて与えた。3つのグループは同量のラウンドアップ除草剤とGMコーンを混ぜて与えた。対照群には非GMコーンを33%混ぜた餌を与えた。

CRIIGENのメンバーでありロンドンのキングスカレッジの分子生物学者で遺伝子専門家のDr.ミシェル・アントニオウは、「今回のはGM食品とラウンドアップ除草剤の健康影響に関する最も周到な実験です。結果は異常な数のラットが早期にガンが発症すること、特に雌は重篤であることです。非常に悪影響が強いのに驚いています」と語った。

レポートには、「低濃度から高濃度まで類似した病理が同程度で出るのは閾値のあることを示唆している。この閾値は、食品中に11%のGMコーンがあるか飲料水中に50ng/Lのグリホサートが場合に起こる。50ng/Lは、実験ラット群の最低濃度の値であり、政府許容値内の値で水道水に見られる汚染濃度でもある。

この実験の結果は、現在の化学物質、除草剤、新作物の承認プロセスには重大な疑問を提起するもので ある。現在GM作物の安全としての認証は90日給餌試験に基づいている。また、対象も有効成分であるグ リホサートのみで製品に含まれる界面活性剤を含む試験を行っていない。

安田コメント

注目すべきはGMトウモロコシの長期の微量摂取で大きなガン腫瘍を生じたことだ。これまで認可されてきたGM作物はどれも短期の動物実験のデータだけだった。私たちは長期にわたってGM作物をさまざまな食品から微量ながら摂取し続けている。新奇の、人類が食べたことのないGM食品については、生涯にわたる慢性毒性実験、次世代にわたる毒性実験という長期の安全性試験が必要と最初から主張してきた。

しかし、米国評価にならい、日本の評価機関も実質的同等性(元の作物と組み換え作物が姿形、主要栄養素などが実質的に変わらないとみなせるなら安全性は元の作物と同じ)という非科学的評価でこと足れりと摂取実験は短期実験のみで押し通してきた。

新たな知見が出た以上、日本政府は一旦流通を止めて、長期摂取の影響データを出させて安全性評価の見直しをするのが当然の責務。食品安全委員会、消費者庁にはちゃんとやってもらわねばなりません。

また、改めて考えさせられたのは、遺伝子組み換え作物のみならず、放射能も電磁波も農薬、添加物を含む化学物質も、これまで高用量の短期曝露を問題とし、微量・長期間の摂取・曝露の影響についてはほとんど無視され、研究されてきていないことだ。そして微量だからと野放しになっている。

しかし実際、私たちが受けているのは微量の長期摂取・曝露なのだ。生体の遺伝子機能に作用するのは実は一時的高容量の場合よりも微量・長期の作用のほうが、深刻なダメージを引き起こすことが近年明らかになってきている。

ラウンドアップは主成分グリホサートの評価だけでなく主成分の3倍の毒性と言われる展着剤(非イオン系界面活性剤)を含めた製剤そのものの評価がされなければならない。使用され、環境に使われるのはラウンドアップ製剤全体なのだから。これまでラウンドアップの毒性がモンサントの主張するようには安全な農薬ではなく、人体や環境生物への悪影響を示す事例が世界各地で指摘されてきた。今度こそ食品安全委員会農薬毒性評価部会は見直しの再評価をすべきだ。そして非公開をやめて、企業のためではなく、真摯に安全確保の本来の仕事をしてほしい。

(2012/09/24)

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