米国環境保護庁、除草剤ラウンドアップの残留基準値を大幅引き上げ
大幅な改悪
米国環境保護庁(EPA)は5月1日、モンサント社が申請した種々の農産物における除草剤グリホサート(商品名ラウンドアップ)の残留許容値を引き上げる規則改定を公表した。当該規則は同日から有効で、異議申立てや聴聞会の要請は2013年7月1日まで受け付ける。
改定はこれまでの20ppmから飼料(トウモロコシや脱脂大豆などと思われる)やテフ(イネ科の植物 )の茎葉飼料、干し草は100ppmに。キャノーラ(ナタネ)以外の油糧作物(大豆やトウモロコシ、綿実などと思われる)は40ppmに。キャノーラは20ppmのまま。
0.2ppmだった根菜類のうち、人参は5.0 ppm、ポテトは3.0 ppm、テンサイは6ppm(30倍!)へ増加。その他の野菜、果物は0.10 ppmだったのがオクラは0.50 ppm、かんきつ類は0.50 ppm 、ナシ類は0.20 ppm、ベリー類は0.20 ppmに引き上げるというもの。
主に飼料や輸出用農作物の残留濃度を引き上げることになる。TPPによる「米国基準への一律化」が輸入国の規制を突破できるため、残留農薬量を引き上げたのだろう。TPPに日本が参加すれば、米国基準受け入れが義務化されるから、国内の残留農薬基準もこれに合わせ緩和させられる。
TPPの関税撤廃により、北海道のテンサイ(サトウダイコン)生産が壊滅して輸入の農薬まみれのテンサイを押しつけられるだろう。大豆のグリフォサート残留規制値は米国の遺伝子組み換え大豆輸入が始まる前までは日本の規制値は6ppmだったのを遺伝子組み換え大豆の輸入が始まるときに米国基準20ppmに合わせて引き上げた経緯がある。科学的安全性評価ではなく、もろ政治的な決定だった。それがさらに倍になるのだ。かんきつ類をはじめとする果物もラウンドアップまみれになる。
引き上げの背景
ところで、なぜこのように残留許容量を大幅に引き上げる必要があるのだろうか?
おそらく米国の農地ではラウンドアップ耐性雑草がはびこり、散布量を増大せざるを得なくなっているのかもしれない。モンサント社には残留値引き上げでラウンドアップの使用量増大=売上増がもたらされる。
米国の土壌、水はラウンドアップ汚染が深刻化し、生態系にも、また、飲料水を通じて米国人の健康にも悪影響を及ぼすことが懸念される。摂取量は微量で、安全だとされているが、生物が有害物質の微量かつ長期暴露にさらされると、一時的大量暴露では機能する生体防御システムを有害物質がすり抜け、免疫系やホルモン系などを破壊することが近年知られるようになった。とくに細胞分裂の活発な幼い生体への影響が大きいという。
しかし、モンサント社の利益を優先させるEPAには回転ドア人事によってモンサント社の支配が及んでいるのだろう。米国食品安全基準は科学的というより、政治的基準とみておいたほうがよい。
さて、飼料自給率25%を切る日本の畜産は輸入の米国飼料に牛耳られている。食品においては食用油を筆頭に醤油や大豆製品、コーンスターチなど加工食品原料の多くを米国に依存。国内自給をまともに取り戻していかないと子らの健康を守ることはできない。
以下はこの基準改悪に異議申し立て文書の提出(7月1日までに)を呼び掛けた"The Cornucopia Institute"の情報から転載する。
2013年6月26日グリフォサートは農業関連事業とバイオテクノロジーの巨人、モンサント社が製造、販売する除草剤。モンサント社はグリフォサートは安全であり、EPAに残留基準値を上げさせることに成功したと発表。しかし、独立した科学者たちはモンサントに同意しない。いくつかの最近発行された専門家の研究では内分泌かく乱物質であることが示されている。
国立衛生研究所(NIH)によると、内分泌かく乱化学物質は公衆衛生(特に女性の性や生殖の健康)に、長期の影響を及ぼす。そして、「用量が(多ければ)、毒性を生む」、基準は内分泌かく乱化学物質にあてはまらない。それは低用量で我々の体をむちゃくちゃにする。2013年6月の独立系の研究では、グリフォサートは人の乳がんに関係するホルモンの増殖効果をもたらすと結論。http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23756170
2013年4月のMITの科学者はグリフォサートは、食物に残留する他の化学物質や環境有害物質の有害な影響を強化すると結論づけている。グリフォサートの体への悪影響は「細胞システムに炎症の打撃を与え、その悪影響は潜行性で、時間とともにゆっくり現れる」と指摘している。http://www.mdpi.com/1099-4300/15/4/1416
(2013/07/08)